関西学院大学探検会

四万十川リバーツーリング合宿報告書
商学部3回生  岡田 章宏

1 合宿の主旨
我が部での川の活動は、保津川などのラフティングが中心となっている。しかしそれだけが、今後の活動において川のすべてではないはずである。確かにリバーツーリングは、ラフトに装備を積まなければならないところから人数が限られたり、期間が長いため夏休み以外には難しいとか、ラフティングに比べて手軽に出来ないといった点がある。しかし他大学ではラフティングと並んでリバーツーリングも盛んに行われ、それなりに結果を出している。また、それまで川といったら、保津川・熊野川・吉野川以外考えた事もなかった。そして昨年の関探会で、立命館大の四万十川リバーツーリング合宿の話を聞いて「最後の清流」で名高い四万十川に関心を抱き、この合宿を計画するに至った。また、我が部では一昨年の熊野川合宿以来行われていないリバーツーリング合宿の可能性を探るのも、今回の重要な目的である。この合宿で得た成果・反省点を、今後のリバーツーリング合宿に活かしていきたいと思う。

1 四万十川の概要
当初は「中級コース」の土佐昭和から下る予定だったが、時間の余裕と水量から考えて、「初級コース」の江川崎から下る事にした。行った時の水量は少な目で、時々浅瀬があり、それをかわすにはヘアピン状にコースを取らなければならなかった<図1> 当然、コースを誤れば浅瀬に乗り上げてしまうので、そのたびにポーテージを余儀なくされた。全体的に水深は2メートル以内で、場所によっては十分川底に足が届いてしまう。深いところでは2〜4メートルあり、泳ぐのにも最適であった。上流には3~4級の難度の高い瀬が存在するが、江川崎以降はあってもせいぜい1~2級程度で、荷物を満載して下るには全然問題のないレベルだった。逆に刺激を求めるには、物足りないだろう。水質に関しては、「清流」といっても必ずしも完全に無色透明な水であるわけではない。もちろん、保津川などとは格段に水はきれいだが、見た限りでは吉野川と透明度は大差がないようにも見える。しかし、吉野川以上に豊富な生物が生息しているところから、この川が「清流」と呼ぶにふさわしい事が分かる。実際、川で漁業が成り立っているのはここ以外ほとんどないであろう。特にコース中盤には、河原に上げられている漁船や、川の中に仕掛けられた網などが目立った。ウナギや鮎以外にも様々な川魚が獲れるのである。周囲の環境は大変良く、木々に囲まれているところが多かったが、川を降りれば民家や食料品店もあり、食料調達に便利だった。また、店以外にも公衆トイレが所々にあったのも、パドラーの多く訪れる四万十川ならではの心遣いなのかもしれない。ほぼ数キロおきに河原があったため、テン場には苦労しなかった。ただ、場所によっては観光船がかなりたくさん行き来し、危険だった。いくらシーズン中で稼ぎ時とはいえ、もう少し配慮が欲しいと思った。漁民からも、「神の川を汚すな」といったような、観光船を非難するような看板が区間内で目に入ったところから、互いの利害の対立が深い事も知らされる。


3 行程
8月10日 14:00頃 吉野川合宿後、阿波池田で大西合流。その後、食糧買い出し
      20:00頃 杉本、大歩危駅にて合流
  11日  4:00 江川崎到着。テント設営およびラフト膨らます
       5:30 吉田、車を置きに中村へ
       9:00 残りメンバー起床
      12:00 昼食
      15:50 吉田、テン場に戻る
      17:00 出艇
18:00 網代のテン場に到着
  12日  7:00 起床
       7:30 朝食
       8:30 出艇
      16:00 小浜到着
  13日  7:00 起床
       7:30 朝食
       8:30 出艇
      11:30 口屋内にて昼食
      13:00 出発
      16:00 手洗川到着
  14日  7:00 起床
       7:30 朝食
       8:30 出艇
      11:30 今成にて昼食
      15:00 終着点、四万十川橋に到着

4 詳細
<8月10日>2時、吉野川合宿を解散させてから、阿波池田にて大西合流。杉本は出発が遅れ、また乗った列車が大歩危駅止まりであったため、車で夜8時頃に大歩危駅にて合流した。坂井は沢合宿に行ったため、今回の合宿には不参加。そこから車で江川崎を目指すが、途中路面状態が悪いのと、杉本が車酔いした事で、最終的に江川崎に到着したのは朝の4時だった。河原まで車を降ろして、テントを設営してラフトを用意し、すぐに仮眠に入った。
<8月11日>吉田は5時半に起きて四万十川橋へ車を置きに出発。残りのメンバーが起床したのは、9時だった。当初の予定では11時までに吉田が電車で戻ってきて、昼には出発する予定だったが、途中の道路で予想以上に時間がかかったため電車に間に合わず、吉田が江川崎に戻ってきたのは昼の3時50分だった。時間がないため江川崎でもう1泊してから、翌日出発する事を提案したが、少しでも距離を稼いだ方がいいという吉田の意見に従って、17時に出発。結局この日漕いだのは僅か1時間であったが、結果的に少しでも移動したのが正解であり、予想以上に行けたのも後々に良く影響した。テン場は、少し上がれば公衆便所もあり、ちょうど良い場所だった。浜辺には小さな蜘蛛がたくさんいて、蜘蛛嫌いの私としては浜辺でバールを洗うのがいやだった。
<8月12日>予定通りに起床して、出発。何度か浅瀬に乗り上げ、その度にポーテージする。時折、1級程度の瀬が出てくるが、全然問題なく行けた。途中休憩する事はほとんどなく、小浜までほとんど漕いだままだった。当初テン場で昼食・夕食の両方を作るつもりだったが、女子の二人はバタンキュー状態で昼夜兼用の食事だけで終わってしまった。体力的に少し厳しかったようだ。
<8月13日>この日もほぼ予定通りに起床、出発。前日の反省から、途中で止まって昼食を作るようにした。また、途中では沈下橋のたもとで休憩したり、ラフトから降りて泳いだりと、余裕を持たせたスケジュールだった。それでも、うまい具合に追い風が吹いているため、1日に10キロ弱は十分進む事が出来た。ただ、この日の区間は観光船がひっきりなしに往来して危険だった。その観光船に抗議する横断幕などが途中に数箇所見られたが、こちらに手を振ってくる観光客を見るたびに、複雑な心境となっていった。
<8月14日>当初の予定では15日の昼に到着だったが、合宿の行程はこの日が最終日となった。四万十川も下流になると、それまでは山と緑に囲まれた中を下っていたが、川の周囲はだんだん開けた平野へとなっていた。川幅も広くなり、いよいよ残すところあと僅かといった雰囲気となってきた。そして終着点の四万十川橋に到着したのが、15時過ぎであった。全行程約37キロ。「最後の清流」は、最後までその清らかさを失う事はなかった。まだ河口まで数キロ続くが、清流が果て海へと辿り着くところを見届けたかったが、かなわなかったのが悔やまれた。旅の終点の河原では、小さい子供たちが遊んでいた。そして四万十川を後にした4人は、徳島県の山中で1泊しながら徳島市を目指し、翌日15日に夏の夜を踊り狂い明かしたのであった…

5 全体的な感想
今回の合宿は、私自身が企画発案、そして隊長を務めた初めての合宿となったが、不慣れな点もあって列車の時刻を調べ忘れたりと、準備不足や不備が目立ち、吉田さんに迷惑をかけたりもしてしまった。そのたびに自信を無くして塞ぎ込んだりもしてしまったが、結果としては「自分が率先していく立場として、どんな事をすればいいのか」といったように大きな勉強になったし、合宿も成功に終わったのだから自分に自信を持ちたいと思っている。
途中でいろんな人にも出会った。犬を連れてファルトボートで下る人や、カナディアンを駆る父子二組など、いわゆる「パドラー」も多かったが、地元の人も温和に思えた。モーターボートを操り、子供に泳ぎ方を教えるお父さんも渋かったが、懸念していた漁民や釣り人とのトラブルに遭う事もなく、余所者に対してもやさしいところはここ以外には少ないのではないのだろうか。良く「自然のきれいなところは、人の心もきれいだ」とも言ったりするが、心無い外部の人々に、このきれいな自然が汚されたりしない事を切実に願う限りである。
気づいた事は、リバーツーリングが通常のラフトの上達にも多いに有効であるという事である。ツーリングは瀬が少なく瀞場がほとんどだが、それゆえ細かい技術が現れるのである。例えば、正しく漕ぐ事が出来ていなければ舟は一定の方向を向かず、結果的にジグザグ走行となってしまう。激しい瀬の続くコースでは多少向きがずれるのは見落としがちだが、瀞場ではこれが顕著に表れてくる。また、漕ぎ続けている時間もラフティングよりもずっと長い。そのため、ラフティングの技術向上のためにも、これからもリバーツーリングも川合宿の一環として行っていきたいと思う。ただ近場では、ツーリングに適した場所が少ないのが問題だ。その時はおそらく、琵琶湖で1泊程度の行程になるだろうか。それ以外にも、夏休み以外にやるのは難しいが、四万十川にも劣らないという山口県の清流の錦川や、北海道の大自然を駆ける釧路川とかへも行ってみたいものだ。1艇では人数が限られるので、2艇でのツーリングも考えていきたい。
装備的には、最低限一人一人がドライバッグを用意する方向で行くべきだと思う。使う機会は少ないが、装備をぬらさないためにゴミ袋やジップロックで厳重に包んで何とか持ったが、これではやや心もとないので、ぜひとも持っておきたい。ツーリングに限った事ではないが、個人装で、最低でも共装で、ウェットスーツを用意するように出来ないものか。そうすれば、川の出来る時期の幅も広がり、川の活動もより盛んに出来ると思うのだが。このような装備の関係が、我が部で川が下火になっている大きな原因の一つに挙げられると思う。川に限らず、ウェットスーツは沢や洞窟でも有効なので、個人の標準装備として考えていくようにしたい。安いものならば2万円以内で十分買えるはずだ。
最後に、四万十川の資料を提供して下さった、立命館大学探検部に心から感謝の意を述べると共に、四万十川リバーツーリング合宿の報告書を締めくくらせて頂きます。

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