関西学院大学探検会

仁川オオサンショウウオ生息可能性予測調査合同合宿VOL.1報告

  期間    2003年7月13日(日)〜18日(金)
今回の目的  @仁川中・上流2箇所での水質調査
         A上流域の沢登り・流域把握
  予想   水質はオオサンショウウオが生息することができるくらいきれいなのではないか。

[隊長・記録・補佐] 北原知也 関学 社5
[副隊長・食料]   渡部彩 関学 経2
[記録・装備]     松岡はるか 神戸女学院 文3
[緊急連絡先]    松尾常広 関学 経3

測定項目  COD(化学的酸素消費量)アンモニウム 亜硝酸 硝酸 リン酸

『報告』
〔T、水質記録票 関西学院大学探検会・神戸女学院大学探検愛好会〕
水質調査はパックテストを採用。(株)共立理化学研究所製の「川の水調査セット」(型式AZ−RW)。

第一回
日付: 2003年 7月13日(日)
時刻: 11時40分
天候:雨
前日の天候:曇りのち雨
気温:21度
水温:18度
採水場所:仁川・新鷲林寺橋下、上流部河原(地図中ポイントA)
川幅:4m
水深:約20cm
検査者:北原知也、松岡はるか、渡部彩
周囲の風景:両岸を木(主に落葉樹)が生い茂る砂地の河原
      再水場所のすぐ上流と下流に堰堤がある。

そのほか気づいたこと:新鷲林寺橋は交通量多め。下流で県道の建設作業。ごみ少なし。

測定結果:
COD 0ppm
     アンモニウム 0.2mg/L以下
     亜硝酸 0.02mg/L
     硝酸 2〜5mg/L
     りん酸 0.05mg/L以下

メモ:以上の結果からわかることは、「非常に水がきれい」だということです。
   硝酸の数値が他と違い比較的高いのは、この流域の地質が元々硝酸イオンを多く含むものであるか、流域一体で何らかの汚染物質が混入しているのが理由だと思われますが、量的に水環境に与える影響はほぼないといってよいものです。

生物:サワガニ多数確認(褐色のもの。甲幅1から2cm程度のもの)。サワガニは渓流など水質のきれいなところ、自然環境の豊かなところに住むもので(水質環境T、とてもきれいな水)、近年市街地化の影響で減少傾向が見られる。オオサンショウウオの主食のひとつである。(環境省生物多様性センター http://biobic.go.jp)

第二回
日付:2003年7月18日(金)
時刻:11時21分
天候:曇りのち雨
前日の天候:晴れ
気温:23度
水温:19度
再水場所:仁川中流、ムーンライト岩場下流の淵(地図中ポイントB)
川幅:3m
水深:深いところで1m、平均して約70cm
検査者:北原知也、松岡はるか
周囲の風景:草木の生い茂る岩場
注意点:長雨の影響で通常より水量多いと思われる。
測定結果:
COD 1ppm 
    アンモニウム 0.2mg/L以下 
     亜硝酸 0.02mg/L以下
     硝酸 1mg/L 
     リン酸 0. 1〜0.2mg/L

メモ:上流域で県道工事をしているのに、水質にはさほど影響がない。上流域では硝酸が比較的高めであったがその数値もここでは半分以下に下がっている。この場所の水も「非常に水がきれい」ということができる。 

生物:調査地周辺に黒くて細長いトンボがたくさん飛んでいたので興味を持って調べると、クロサナエ(サナエトンボ科クロサナエ)だとわかる。大きさは30mm〜37mmになる。成虫は河川の上流部〜源流に見られ、5月ごろより羽化し始め、6月にかけて渓流付近で見られるものである。クロサナエは水質の良いところに生息する貴重な生き物のようです。(同定参考資料:http://www.1bm.go.jp/emuseum/zukan/tonbo/start.html)

〔U、行動記録〕
7月13日
天候:雨
9:00 部室集合(トラップを作る)〜11:00 新鷲林橋着(第一回水質調査、トラップ仕掛け)〜12:30 仁川遡行開始(ルートを大藪谷にとり、芦屋奥池に抜ける)〜15:00 遡行終了(昼食)、下山(地図参照)
7月14日
わなが流されているのを確認。雨ゆえ今回は断念する。
7月18日
   天候:曇りのち雨
   11:00 仁川ムーンライト岩場付近にて水質調査、トンボの同定

〔V、結果。隊長の感想ならびに、この合宿の反省〕
  今回の調査の結果、仁川の水質は中・上流で大変きれいなものであることがわかった。えさのサワガニも確認され、オオサンショウウオ生息の可能性は十分にあると考えられる。

  そのほか考えなければならないのは、えさ、すみか、などの問題である。

2001年12月某日、個人活動にて山登りをした。真冬だった。場所は社家郷山、樫が峰。「北原の低山徘徊趣味もここまできたか」という反応が聞かれそうな六甲東端のひっそりしたヤブ山である。そもそもそんな時期に思い立ったのは、2001年の11月に仁川上流社家郷山付近で市職員によりオオサンショウウオが確認された、という報道に興味を持ったからだった(朝日新聞阪神版2001年11月10日朝刊)。どんなところだろうと思って行ってみたのだが、付近はコンクリ三面張り。うーむ、ここなのか?すぐ上手にはうっそうとした草木に砂の河原だったとはいえ、すぐそばをけっこう交通量の多い道路が走っていた。?マークをたくさん残してその場を去った。
  それでもいつか自分の目で確かめてみたいなあ、と思っているうちに怠惰な1年が過ぎてしまった。なんとかしなくては、と別になんにもしなくていいのだが小川や大島、宗石などに呼びかけ、ぶらりと仁川の沢歩きに出かけたのはまたもや真冬の11月。このときは岩トレ現場からピクセンまで単に沢登りをしたに過ぎなかったが、途中クレソンが生えているのを見つけた。うーむ、意外にきれいな川なんだなあ。本当にオオサンショウウオいるのかも、調べてみたいなあという思いが膨らんだ。
  終始、個人的な活動でも良かったのだけど、なんとなく山行届けを出してしまった。幸い興味を持ってくれた同士(松岡、渡部の両氏)もいた。簡単な水質調査キットも見つけ、それで検査した。わかったことは予想通りでもあったが「仁川は水が大変きれい」。ただこの2年間に社家郷山付近は県道工事で風景が一変しておりびっくりした。水がにごる箇所もあり、心配していたが水質にはさほど影響はないようだった。でもあの時見たうっそうたる草木や砂の河原は全くなくなっていた。オオサンショウウオはどこに避難したのだろう。
  発作的単純興味的に始まったこの合宿だが、年に一度でもこの簡単な水質調査が続けばつもりつもってなんとかなるのではないだろうか、みたいな事を考えている。はっきりいってこんな調査は小学生が夏休みにする自由研究レベルだ。でもまんねりっとした探検会の活動(毎年報告書を読むたびに思う)になにか良い意味で「ヘンなの」を取り入れるきっかけになってくれないだろうか(ならないか)。
 いろいろ反省事項はあるが、初歩的なので胸の内にしまっておいて次に活かしたい。そうだ、またやるのだ。川地図の作成、ということも考えたが遡行中、堰堤の数の多さに愕然とした。地図を作ったら堰堤ばかりが書き込まれることになるだろう。面白くないから止めた。
                 2003年10月17日 記録:北原知也

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