関西学院大学探検会

個人山行記録:「雌阿寒岳登山」            北原知也(社5)

雌阿寒岳は標高1499mで活火山である。
道東・多和平の展望台からこの山がよく見えた。西のかなた、手前に見えるのが雄阿寒、後ろのでこぼこが雌阿寒と阿寒富士だろう、いい形だなあと思いつつ眺めていた。
今回山の装備は持ってきていなかった。ぶらりとキャンプに来たのである。何しろ登山靴は重いので行く前に散々思い悩んだ挙句持ってこなかったのだ。でも次第に後悔することとなった。車で山に近づくにつれ、そしてオンネトーから雌阿寒、阿寒富士を目近に見て完全に気が変わった。これはすごいな、登っときたいと。
 地図は持ってきていなかったから、大慌てで地図を探した。阿寒湖の観光街にはコンビにはあっても本屋が一軒も無く、やっと観光案内所で簡単な登山地図がもらえた。オンネトー温泉横の登山道からなら往復3時間半で頂上までいける、スニーカーでもなんとかなるやろうと確認した。

 山の朝はココアに限る。五時に起きバールで湯を沸かす。フライを開け、タバコを一本吸う。ココアを飲んでいると空が完全に明るくなり目がぱっちり覚めてくる。朝はうんこやらめしやらであわただしく過ごすのではなく、こうしてゆったりした時間も持ちたいものだ、と思う。…とか何とか書いておきながら、実はこの朝は寝坊した。空が高曇りなのが不機嫌だった。昨日は快晴で素晴らしかったのだ。ふてねかな。二度寝かな。といってもまあ二度寝もなんだしと、テントを撤収し、ベーコンやとうもろこし、昨晩ふかしたじゃがいも入り味噌ラーメンの朝食をとった。気は乗らないながらも体は勝手にすばやく山の準備をしている。クセである。

 オンネトー国設キャンプ場は一泊テント一人250円。管理人のおじちゃんが良い。プリティ長島を更にプリティにした感じの人の良さだ。顔なじみの登山者が取ってきてくれたというマツタケを見せてくれた。ところが形は立派なマツタケでも、匂いがどうかいでもしいたけなのだ。「うそー、これマツタケちゃうやろー」「嘘なんか言ってないよぉ、これはマツタケだよ(長島監督の物まね風に)」。「これはねぇ、標高あがったところのハイマツのあたりでこうやって腰かがめてとるんだよ」「うそやー、ハイマツなんかでマツタケ取れるんかいなー」「とぉれるよー!取るのに夢中になってぱっと顔上げたら熊がいたなんてことになるんだよぅ気つけないとぉ」。当然くれるのかと思ったら単に見せにきただけなのも、なかなかセンスが良かった。

 北海道で怖いのは羆。管理人さんによるとオンネトーキャンプ場そばでは発見事例があまり無いという。アカエゾ松の純林がひろがる針葉樹林帯だからだろうか。雄阿寒のほうではふもとの太郎湖や次郎湖でよく見かけられるそうだ。二週間前には団地の飼い犬が熊にばっさりやられたと聞いた。

 百名山らしい。登山者が数多くいた。熊よけの鈴は持っていなかったが、他の登山者が多かったのであちこちでりんりんうるさく、なくてもよかった。前日に買ったニポポのネックレスをお守りに(僕は縁起を担ぐのだ。今回はいつもコンパスにつけている住吉大社のお守りが無かったので急遽お守りを買い求めた。)7時半出発。なんてこともなく歩きやすい登山道を4合目までひょいひょいっと。1000mそこらでハイマツ帯となった。マツタケは生えてなさそうだぞ。涸れ沢筋の赤紫や黄色味がかった火山特有の地肌が珍しい。5合目あたりからは北東にオンネトーが見える。眺め下ろすと、裾野がなだらかに一面深い森なのが嬉しい。こりゃあ羆もいるだろうな、と思わせられる森なのだ。既に硫黄のにおいもする。
 9合目に稜線に出る。といってもここは独立峰。山の肩みたいなところだ。火口の縁と言ったほうがよい。いきなり風が強くなる。帽子が飛ばされそうになるほどだ。そして異様な景色・火口湖である赤沼の、脇から吹き上げる水蒸気のすごい音。感動した。「火山やんこれ!」そうだ、1950年には水蒸気噴火を起こした火山なのだ。阿寒富士もまったくもってきれいな姿。北東方面、阿寒湖側に広がる火山地帯特有の風景も素晴らしい(なんといっていいかわからない)。
 頂上には1分いただけ。寒いのと風がきついのとでステイしてられない。名鉄観光の百名山ツアーガイドの兄ちゃんに写真を取ってもらってすぐ逃げた。山頂付近の岩場を風除けに休み、プリムスで湯を沸かす。ココアを飲む。あったかい。

 下山は来た道を戻るだけ、コース上に危険な箇所は無い。ただスニーカーで足が痛いのでゆっくり歩いて11時半には下山。振り返ると山のほうは天気が崩れてきたみたい。うーむラッキーだった。僕らはまた車に乗り、足寄方面に旅立った。(同行者:北中里佳・神女4)

登山日:2003年9月8日
…雌阿寒岳の簡単な登山地図は観光案内所のほか、阿寒ビジターセンター(ネイチャーセンター)でも無料でもらえる。
コース:オンネトー温泉横登山口からピストン。登り二時間、くだり一時間半が目安。オンネトー国設キャンプ場の駐車場からも登山口があります。要確認。
…オンネトー温泉露天風呂はヘンな温泉。男湯から女湯が丸見えだった。あれはやばい。

(文責:北原知也)

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